刃牙「ッへェ～……意外……」

刃牙（まさか国を脅して、ムリヤリ発行させたんじゃないだろうな……）

勇次郎「親子ならたまにはドライブぐらいしねェとな」

刃牙「ウン……」

刃牙（オヤジがこんな提案してきたこと自体は、やっぱり嬉しいや……）

刃牙「で、クルマは？」

勇次郎「コイツだ」

刃牙「いいクルマじゃない。どうしたの？　レンタカー？」

勇次郎「ストライダムから拝借（かり）た」

刃牙（いつもいつも大変だなァ、キャプテン……）

ワロタ

勇次郎「乗れ」

刃牙「じゃあ助手席に」

刃牙（しっかし、オヤジが本当に運転なんて出来るんだろうか）

刃牙（アクセル踏みすぎて、足が車の底をブチ抜いて、そのまま足で走る……なんて光景しか想像できない）

勇次郎「刃牙よ」

刃牙「？」

勇次郎「シートベルトをしろ」

刃牙「あ、ゴメン……」ｺﾞｿｺﾞｿ…ｶﾁｬｯ

勇次郎「シートベルト使用の有無で、事故の際にどれほど負傷の程度に差が出るか知らぬわけではあるまい」

刃牙「ハ、ハイ……」

刃牙（アンタ、たとえトラックと激突しても怪我一つしないだろ……）

勇次郎「ミラーよし」ｻｯ

勇次郎「安全確認よし」ｻｯ

勇次郎「出発だ」

ﾌﾞﾛﾛﾛﾛﾛ…

刃牙「オヤジの口から“安全”なんて言葉が聞ける日が来るとは思わなかった……」ﾎﾞｿ…

勇次郎「何かいったか」

刃牙「いえ、なにもいってません！」ﾌﾞﾝﾌﾞﾝﾌﾞﾝ

ﾌﾞﾛﾛﾛﾛﾛ…

刃牙「……」

刃牙「オヤジ、もうちょっとスピード出してもいいんじゃない？」

勇次郎「刃牙よ」

刃牙「？」

勇次郎「自動車というのは走る鉄の塊――いわば凶器に他ならねェ」

勇次郎「たとえ運転していなくとも、自分は凶器に乗っている、ということを意識しろ」

勇次郎「軽々しく“速度を上げろ”などというものではない」

刃牙「ハ、ハイ……ッ」

刃牙（なんてマトモなことをッッッ！）

ﾌﾞﾛﾛﾛﾛﾛ…

刃牙「あ、黄色になった」

勇次郎「スピードを落とすか」ｸﾞｯ…

ｸﾞｯ…

ｸﾞｯ…

刃牙（オヤジ……ちゃんと予備制動するんだァ……）

教習ビデオやめろ

ﾌﾞﾛﾛﾛﾛﾛ…　ｷｷｯ

勇次郎「合流か……」

刃牙「どのクルマもなかなか入れてくれないね」

勇次郎「……」

刃牙「ア……入れてくれるみたい」

勇次郎「……」ｸﾞｯ

ﾌﾞﾛﾛﾛﾛﾛ…

他の車のカーナビがズレまくって危険だから運転やめろ

これはゴールドだわ

この時、刃牙は目撃する――



勇次郎「……」ｻｯ ｶﾁｯ

刃牙「～～～～～～ッッ！」





範馬勇次郎の――サンキューハザード！！！

サンキューハザードするだけで面白い男

ﾌﾞﾛﾛﾛﾛﾛ…

刃牙「あ、カーナビがズレてる」

刃牙（これはまさか、あの二人のどちらかが……）

勇次郎「刃牙、今すぐアリゾナ刑務所かゲバルの島に電話しろ」

勇次郎「素早く動くのをやめろとなッ！」

刃牙「イヤ、番号なんて知らないし、オヤジがすれば……」

勇次郎「運転中の電話がどれほど危険か知らぬわけではあるまいッッッ！」

刃牙（全国のドライバーに聞かせたい言葉だッ！）

おまえや

刃牙（とりあえず、カーナビのズレは勝手に直ってよかった）

勇次郎「……」

刃牙（右折待ちか……）

刃牙「オ……」



対向車「……」ﾁｶｯﾁｶｯ



刃牙「オヤジ、譲ってくれてるよ。早く行かなきゃ」

勇次郎「待て」

ﾌﾞｵｵｵｵｵｵﾝｯ!



刃牙「対向車の横から猛スピードでバイクが……！」

勇次郎「サンキュー事故ってやつだ」

刃牙（もし俺がクルマを運転してたら今頃……）

勇次郎「格闘の際の先読みは、すでにオマエは達人の域だが――」

勇次郎「交通の領域ではまだまだのようだな」

刃牙「言葉もありません……」

～～ｯｯ

ﾌﾞﾛﾛﾛﾛﾛ…

刃牙「しっかし、オヤジは運転が上手いね」

刃牙「これならゴールド免許も納得だよ」

勇次郎「運転が上手いというより、して当然のことをしているだけだ」

勇次郎「いかに世の中、その“当然のこと”が出来ていない輩が多いかということだ」

刃牙「ナルホドね……」



ﾋﾞｰﾋﾞｰｯ!　ﾋﾞｰﾋﾞｰｯ!



勇次郎「……ン」

刃牙（後ろからクラクションが……）

ﾋﾞｰﾋﾞｰｯ!　ﾋﾞｰﾋﾞｰｯ!

ﾁｶｯ　ﾁｶｯ



刃牙（クラクション鳴らしたり、昼間なのにライトをやたら点滅させたり……）

刃牙（今ニュースでよくやってる煽り運転ってやつか）

刃牙（よりによって範馬勇次郎のクルマにやるなんて……なんて命知らずな……）

勇次郎「……」

免許取れる歳なんだっけ

ﾋﾞｰﾋﾞｰｯ!　ﾋﾞｰﾋﾞｰｯ!　ﾋﾞｰﾋﾞｰｯ!　ﾋﾞｰﾋﾞｰｯ!

刃牙（だけどさすがはオヤジだ。こんな煽り運転にはビクとも――）



勇次郎「……」ﾒｷ…



刃牙「～～～～～～～～～～ッッッ！！！」

刃牙（俺が鞭打喰らわせた時のツラになってる！）

ﾋﾞｰﾋﾞｰｯ!　ﾋﾞｰﾋﾞｰｯ!　ﾋﾞｰﾋﾞｰｯ!　ﾋﾞｰﾋﾞｰｯ!

刃牙「オヤジ……落ち着いて……」



勇次郎「……」ﾋﾞｷﾒｷ…



刃牙「オヤジ……ッッ」

この時のことを、後続車を運転していた江本正伸（27）はこう語っている。



「ええ……確かに見えたんですわ」

「前を走るクルマが……ええ、まるで鬼の貌のように」

「気っていうのかオーラっていうのか、そういうのの作用なんですかねェ」

「“これ以上煽ったら死ぬ”と直感しましたね、ええ。即ブレーキかけて減速ですわ」

「え、今も煽り運転をやってるかですって？」

「まさか……二度とやりませんよ、あんなバカなこと。安全第一です」ﾊﾊ…

クソワロタ

勇次郎「ここらで一休みするか」

刃牙「うん、ちょうど駐車場あるしね」

ﾌﾞﾛﾛﾛﾛ…

ﾋﾟｰﾋﾟｰﾋﾟｰﾋﾟｰ…

刃牙「オヤジ、バック駐車うんめェ～～～～～～！」

勇次郎「大和男子としちゃ当然の技能だ」

刃牙（大和男子ときたか……）

勇次郎「ム、5ミリずれた」

ﾌﾞﾛﾛﾛ…

勇次郎「今度は3ミリ」

ﾌﾞﾛﾛﾛﾛ…

刃牙（完璧を求めるのはいいけど切り返ししすぎだっつーの！！！）

コーラを飲む父子。

刃牙「……」ｺﾞﾌﾞｫ…

勇次郎「……」ｺﾞｳﾞｫｺﾞｳﾞｫ…



ﾌﾞﾛﾛﾛﾛ…　ﾄﾞﾝｯ!

女「キャアッ！」ﾄﾞｻｯ

ﾌﾞｵｵｵｵｵｵｵｵｯ!

女「いたた……」

「あっ、ひき逃げだ！」　「大丈夫ッスか！？」　「クソッ、ナンバー覚えられなかった！」



刃牙＆勇次郎「！」

刃牙「ナンバーはバッチリ見えたし覚えたけど……」

刃牙「オヤジ……」

勇次郎「うむ」

刃牙「やっぱり父子、こういう時は気が合うね」



ギャウッ！！！



通報より――追跡！！！

急ぐのだからこそ疾走（はし）る！！！

走って追いかければスピード違反にならないからな

流石地上最強の親子

ﾌﾞﾛﾛﾛﾛﾛ…

犯人「あっぶねえ……道が空いてるおかげで逃げ切れたぜ」

犯人「カメラがあるような場所でもないし、ケーサツに捕まることは……」

犯人「……ン？」



ﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞ…



犯人「～～～～～～ッッッ！」

犯人（人が二人、後ろから走って追いかけてきやがる！　陸上選手かなんかかァ！？）

犯人「車に追いつけるもんかよォ！！！」ｸﾞﾝｯ

ﾌﾞｵｵｵｵｵｵｵｵｵ…



刃牙「俺らもギア上げようか」

勇次郎「……」ﾆｨ～

刃牙（チョット脱力して……）ﾄﾞﾛ…

ギャウッ！！！

刃牙「……」ﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞｯ

勇次郎「……」ﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞｯ



ﾊﾟｯ!　ﾊﾟｯ!



史上初――生身の人間が速度超過でオービスに撮影される珍事！！！

思いのほかクオリティ高くてワロタ

犯人「ヒイイ……ッ！」

刃牙「追いついた……」

勇次郎「邪ッッッ！！！」ﾌﾞｵﾝｯ



ドゴォンッ！！！



犯人「うわァ～～～～～～～～～～ッッッ！！！」

ｺﾞﾛｺﾞﾛｺﾞﾛ…

ｽﾞｽﾞｩﾝ…

ええやん

刃牙「犯人は無事逮捕（つか）まったし、帰ろうか」

勇次郎「うむ」

刃牙「これから家寄ってかない？　今日のお礼においしい味噌汁ご馳走するよ」

勇次郎「フンッ、マズかったらちゃぶ台をひっくり返すぞ」

刃牙「大丈夫、オヤジのよりはしょっぱくない自信あるし」

勇次郎「イヤミか貴様ッッッ！！！」

ここまで丁寧なssは初めてだ

しばらくして……

ストライダム「オーガ、そういえば私が貸したクルマはどうしたんだね？」

勇次郎「あ……いけねェ、止めっ放しだった」


～


管理人「駐車料金10万円いただきます」

ストライダム「OH～～～～～～～～～～！！！」






―　完　―

安いもんだろｗｗｗ

脳内再生余裕でしたwww

思いの外クオリティ高かった

こういうこと始める時の勇次郎は凄く常識的で知識が細かく言うことがインテリキャラっぽい

漫画化決定